子育て:インターに行くべきか行かざるべきか?それが問題だ

Published: Nov. 7, 2023, 3:09 p.m. (UTC) / Updated: Aug. 29, 2024, 11:59 a.m. (UTC) 🔖 1 Bookmarks
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はじめに

保育園、幼稚園、あるいはインターナショナル・スクール(以下、「インター」)で迷っているご両親にとって、インターを選択肢に入れるかどうかは大きな迷いどころでしょう。将来、子供が英語が出来た方が何かと良いとは思うものの、そんな小さいうちからインターに入れる必要があるのだろうか、など悩みはじめるといくらでも悩めます。また、インターと言っても色々あるしどれが良いのか良く分からないという問題もあります。インターじゃなくても週末の英会話スクール的なものはどうだろう?など、ちょっと妥協的な選択肢もあるでしょう。

こうした問題に対して、東京の港区周辺事情を前提に、選択肢と期待効果や考え方をまとめました。

小学校のお受験をするならインターは行かないべきか?

小学校のお受験をするならインターは行かないべきという指導をする幼児教室は多分あると思います。そしてそれはそれなりに理由があります。知らないと以外に思われるかも知れませんが、ミッション系の小学校であっても、インターあがりの子は取らない(実績はない)ところは多いようです。


インターの子に対する一定の固まった見解があるためです。では具体的にはどういう見解なのでしょうか。例えば以下のような意見(偏見)が典型的ではないでしょうか。

  • モンテッソーリ教育に代表されるインターなどは規律意識が乏しく、小学校に上がってもきちんと座って先生の話を聞くなど、授業を受ける基本的な態度が出来ない子が出来上がってしまう。
  • インターは外人の子も多いため根本的な文化が異なり受け入れがたい。例えば、カーペットの部屋に積み木など遊び道具が並んでいる場合、土足のままカーペットを歩きそこにオモチャを広げて遊んでる。もちろん、遊んだ後の消毒はない。コロナを経てもなおそうした習慣は継続されていて、衛生観念や基本的な躾が相容れない。
  • インターの先生は外国人が多いが、そうした外国人が子供の頃育った環境を前提に子供たちを指導しているが、それは決して質の高いものとは言えない場合がある。
  • インターでは自己主張が強い子供が育つが、お友達への思いやりや「ごめんなさい」「ありがとう」の気持ちなど、日本人であれば当然に相手に期待できるコミュニケーションの基本的要素や倫理観が不足している子が育つ。
  • 英語は出来るかも知れないが、日本語が先生の指示を間違いなく聞けるほど出来なかったらお話にならない。

全てのインターで上記のような状況になるとは限りませんが、小学校お受験を前提とした私立の名門幼稚園の子と比べたら、平均的な「お育ち感」には雲泥の差が出ることは否めないでしょう。その意味で、小学校お受験を考えるのであれば、インターは相当厳選して選ぶ必要がある、もしくは行くべきではないでしょう。
  
小学校の校風にもよりますが、お受験で子供に期待されているのは「育ちの良さ」であり、そうした「育ちの良さ」という価値観を持った両親に育てられたかどうかであるという点を強烈に意識する必要があります。

外国人の多い公立小学校も選択肢か

例えば港区の小学校ではイングリッシュサポートコース(ESC)というコースがある学校があります。外国人児童に多様な教育の機会を提供するため、通常の学級に外国人児童を受け入れ英語で授業等を行う学級のことです。ESCを設置した学級には、日本人児童と外国人児童がともに在籍するようです。
  
クラスなり同じ学年に外国人の子がいれば、その子とのコミュニケーションをする機会があり、それは多分英語を使うことになるはずで、子供が英語に触れる機会が増えるのではないだろうか。もし英語がある程度出来ればワンチャン外人学級に入れてもらえる機会もあるとかないとか。そうしたらタダで子供の英会話が上達するかも知れない。。そう考える親がいても不思議ではありません。
  
実際、商社に勤めている父親がわざわざ子供の小学校のために、ESCコースのある公立小学校の近くにマンションを借りて住民票も移して通わせているという話も聞いたことがあります。
  
しかし冷静に考えてください。それはあまり意味が無いかもしれません。まず親しい友達にならなければ、滅多にその子供同士で長い話はしません。カタコトを時々話す程度の英会話は絶対的に量が不足しています。また親として本当にその外国人の子と仲良くしてもらうことが、子育ての目標に適っているのかも良く考えるべきでしょう。例えば港区ですと六本木などの盛り場があり、そうした盛り場に勤めている外国人も沢山います。その意味を良く考えて見ると良いでしょう。
  
公立は外国人か否かは関係なく、色んな背景の子どもたちがいるのですから、そうした雑多な環境がむしろ良いと判断するなら行けば良いのではないでしょうか。もちろん、一部には中学受験に非常に熱心な公立小学校があったりもしますので、そういう観点も良いでしょう。

未就学児向けの英会話や英語で遊ぶ系の習い事は有意義か?

例えば、外国人の先生が英語で体操を教えてくれるとか、お絵描きを教えてくれるとか、簡単な英会話の練習をしてくれると言ったサービスがあります。多分、親としては英語に慣れさせる教育とか、ちょっと英会話が出来るようになるのではないかと期待して通わせているのではないでしょうか。では、これらのサービスはどの程度意味があるのでしょうか。
  
結論は英語が出来るようになる、という観点では抜群の効果は望めませんので、ほどほどの効果と考えておくべきでしょう。まず子供同士が英語が出来なければ、子供同士のコミュニケーションは日本語になってしまいます。そうなってしまうと先生が英語で話しかけても日本語で返事することが許されてしまいます。そのような状況で子供がわざわざ話しにくい英語で話すインセンティブはありません。また、週に一回1時間のクラスだと年間でたったの50時間程度でしょう。英会話を50時間やった程度の効果だと理解していくことをお勧めします。

インターに行くとどの程度英語が出来るようになるのか?

これは行かせてみないと実感出来ないことでしょうが、いわゆる純ジャパの両親の子であっても相当出来るようになります(但し、学校によります)。これは当然で、朝9時から夕方17時までの毎日8時間英語漬けになったとすると、1ヵ月20営業日で160時間、休みを多めに除いて年間10カ月分だとすると年間で少なくとも1600時間も英語漬けになります。これだけやれば出来て当然でしょう。
  
特に未就学児は言葉の発達も未熟ですが、同時にものすごい速度で吸収している時期でもあります。あれよあれよという間にどんどん新しい言葉や表現を耳コピで覚えて来て、当然ですがとても自然な英語表現を身につけてきます。例えば親は受験英語はやって来たし英語は仕事でも使っていて海外出張もしているからそこそこ知っていると思っていても、小学校入学前には親が知らない英単語や、正直その表現は思いつかなかったけど言われてみればその表現の方が英語らしくてイケている、という言葉を普通に使うようになります。
  
それでもネイティブの子ほどには英語は出来るようにはなかなかなれないのですが、ネイティブの子と同じ内容を同じ速度で勉強することで相当のキャッチアップが可能です。

例えば、子供向けのディズニー番組のパジャマスクでキャラクターが言っていることを完全にキャッチ出来るかというと子供のレベルによってまちまちです。純ジャパの子でも結構出来る子もいれば出来ない子もいます。でもそれぞれの文章のキーワードなりキーフレーズは聞こえているので大意はつかめるでしょう。

小学校になってから英語を始めるのでも遅くないのでは?

それはその通りです。しかし、何を前提に何を目指してそれを言うのか理解しているかが問題になります。インターに行った子目線で言えば、小学校になってからThis is a pen, This is an apple! みたいな2、3歳児向けの英語はお話にならないどころか、つまらな過ぎて苦痛かも知れません。英語力においてはもうインター卒業生とそれを経験してない子とのでは、同じ土俵には立てない位英語力では圧倒的な差がこの時点で出来てしまっているのです(別の言い方をすれば、インターに行ってからそれを前提に小学校を探すと苦労します)。

小学校から英語を始めるということはどういうことかをもう少し考えてみましょう。未就学時点ではインターに行ってなくて、習い事で少々かじったかどうか程度だとして、小学校に入ってから真面目に英語を始めるとなると、選択肢としては以下の4つでしょう。

  • ①塾の英語授業
  • ②英会話学校
  • ③小学校の通常カリキュラム
  • ④英語の学童保育

つまり、日本語しかできない子供のために英語をゼロから教える教育を施すしかないのです。そうするとThis is a pen, This is an apple!のレベルにならざるを得ないのです。港区の英語の学童保育でさえ、日本語しか出来ない子も受け入れているので、残念ながら十分な期待は出来ないでしょう。
  
もうお気付きでしょうが、小学校になってからどんなに頑張ってもインターのような環境に行く道は無いのです。(親が英語しか話せないからインターなんか行かなくても子供も普通に英語が出来るという場合は別です。)
  
最近の小学校は英語にも力を入れているから小学校を卒業するまでに頑張って英検2級を取る子もいるという話もあります。もちろんそれは可能です。しかし、インターの子は小学校卒業時点では、英検などはもう目標にもならないでしょう。学校によっては英検2級クラスの英単語は未就学時点ですでにいくつも習っています。例えばこんな感じです。Amphibians lay eggs. Reptiles have scales. Microbes flourish in human saliva. Dinosaurs became extinct at the end of the Cretaceous period. (両生類は卵を産む。爬虫類には鱗がある。人間の唾液の中で微生物が繁殖する。白亜紀の終わりに恐竜は絶滅した。)このような英語は日本人の未就学児童だと思うと「良く知っているね!」という感じですが、ネイティブであれば別に驚くには値しないでしょう。ナショジオを英語で観ていればいつの間にか知っているレベルです。
  
小学校から英語を習うコースと未就学時点からインターに行くコースの分かれ道はかなり大きいというべきでしょう。
小学校から英語の勉強を始めても英語は出来るようになりますが、インターの子たちのようになるのは極めて困難でしょうし、純ジャパでインターの子もネイティブレベルになるのは相当の努力が必要です。

インターの小学校に関する難所

インターの小学校に行けば英語は相当上手になるでしょう。しかし、例えば文部科学省の定める日本の小学校の卒業資格は得られません。すると中学校や高校を受験出来ない、大学の選択肢が限られるといった切実な問題が起こります。
  
帰国枠で受験すればいいのでは?最近はそういう学校もあるでしょう、という声も聞こえてきますが、そこはそれこそ修羅の道。需要と供給のバランスが悪すぎて、狭き門に大勢が無駄に殺到する構造になっています。
  
インターを選ぶ最大の難所はここでしょう。このくだらない規制のためにせっかくインターに通ったのに小学校は日本の小学校に通うことを選び、せっかく出来るようになった英語力を維持・向上させることが困難な子供が沢山います。半年も英語を使わない環境にいれば子供達の英語力は急速に忘却の彼方に行ってしまいます。
  
このような理由でインターを選ぶのであれば、毒を食らわば皿までもじゃないですが、親は覚悟を決めた方がいいでしょう。(日本の小学校とのダブルスクールという裏技もあり得ますがややマイナーなので今回は取り上げません。)
  
日本の高校や大学に受験して行くのであれば、インターナショナルバカロレア入試が出来る学校など、限られた選択肢の中で結果を出すしかないでしょう。

ダブルリミテッド・リスク

インターの小学校に行く別のリスクもあります。いわゆるダブルリミテッドのリスクです。日本語の能力も中途半端、英語の能力もネイティブに比べたら中途半端なまま大人になってしまうリスクです。日本の文化伝統や歴史について無知で、会話で「てにをは」は間違えないまでも難しい話は出来ないか漢字が書けないようでは、日本では通常の社会人としてまともな仕事にありつけないかも知れません。一方で英語はそこそこ出来るがやはり完璧ではないとすると、英語文化圏でも同様の扱いを受けるでしょう。通常の日本人よりははるかに英語が上手なので日本で外資系企業や英語のコミュニケーションが多い職場なら入社は出来るかもしれませんが、そこで「日本人の客先には出せない」とレッテルを貼られたらキャリアは結構追い詰められるでしょう。
  
小学校でしっかり日本語の勉強をしなかったら日本語が出来なくなるのは当然です。外資系企業に行くとそういうダブルリミテッドな人々は時々見受けられます。そしてそういう人の職場の評価は高くありません。一方で、小学校から大学まで日本の学校の中で暮らしてきて英語は自力でしっかり勉強して獲得した人々の方が職場では成功する確率が高いでしょう。
  
考えてみれば当然で、インターにいることにあぐらをかいたのか、しっかり勉強をして来なかった人はその後の人生でも頑張れません。ダブルリミテッドは小学校など子供時代に不勉強だったために、その後の勉強が英語も日本語も難しくなって来た段階で両方ともついていけなくなってしまい成長がストップしている状態です。一方で純ジャパでも必死に努力して勉強していい大学に合格して大学でもしっかり勉強して来た人は当然ながら社会人になってからも成果を出せるのです。
  
また、親が小学校高学年の英語授業についてサポート出来ないとダブルリミテッドのリスクは高まります。子供が勉強でつまづいた時にすぐにサポートしてあげる必要がありますがそれが出来ないと学校の授業について行けなくなります。
  
更に、小学校ならまだしも、中学や高校で学校の勉強についていけなくなったらどうするのでしょう?「一般の塾でAlgebraを英語で補習」という選択肢は無いので科目別に外国人の家庭教師を雇うのでしょうか?数学や物理、化学を流ちょうな英語で上手に教えられる人をどうやって探すのでしょう?これだけでもリスクの大きさがお分かりいただけるでしょう。
  
インター出身の学生や社会人に対する印象で「頭の弱い子が多い」と内心思っている人は多いのではないでしょうか。なぜそうなるのかというと多分上記のような構造があるため、十分な勉強が出来ていない子が多いためではないかと思われます。
  
ということはもしインターに行っても中学高校でまともに勉強が出来る子に育てるためには、日本語の高校受験や大学受験の塾・予備校に通える日本語能力は必須ということを意味します。
  
インターに行っても日本で就職をすることが選択肢にあるのであれば、それにあぐらをかくのではなく、正しい日本語や日本のルールをしっかり身につけさせ、勉強も努力する習慣を身に着けさせないと後々取り返しのつかないことになるでしょう。
  
努力をする能力を養うという意味では、小学校のお受験を子供に経験させるのも非常に効果があるでしょう。お受験では小学校の低学年くらいにならないとみんな普通には出来ないような指示運動や推論を未就学の時点で完璧にこなせるようにトレーニングされるので、子供も出来るようになるために相当な努力が必要になり、努力する習慣が身に付きます。
  
一方で小学校お受験で合格して大学まで一貫教育の学校に入学した場合、その後受験の洗礼を受けないため同様に努力が出来ない子が育つ可能性はあります。

お受験的なお育ちの良い教育環境とインターの英語力の良いとこどりは出来ないのか?

はい、出来ません。全部は調べてませんが少なくとも港区周辺にはそういった選択肢は無さそうです。港区で無いなら他にもあまり無いのではないでしょうか。
そういう訳なので親が自らの覚悟と価値観なり先見の明、そして子供の能力を信じてどちらかを選択するということが必要になります。
  
皆さんのご健闘をお祈りいたします。

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